そう言って微笑む井上の横顔は、出店の提灯の明かりに照らされて、いつもと違って見えた。いつもより悲しげで、そして、いつもより綺麗だった。俺がとってやろうか。そう声をかけようとした時、ちょうどたつき達が戻ってきて、井上はそっちに気をそらしてそこから立ち去った。<br>それから、俺はいつか井上にネックレスを贈りたいと思うようになった。カラフルなプラスチックがはめ込まれた子ども用のじゃなくて、それに似たような、井上の新しい思い出になれるようなものを。ただ、そういうのは本当にむちゃくちゃ高くて、高校生の俺には手も届かないし、リルカが言うには井上の歳ではまだ似合わないというから、色々見てこのネックレスにしたのだ。<br><br>「大丈夫だ。井上はバンザイして喜ぶ。」<br>「ぶはっ、なんだそれ。」<br><br>チャドの言葉に、思わず吹き出す。でも、想像できる。井上の喜び方は、ストレートだから。<br><br>「それで、クリスマスの約束は取り付けたのか?」<br>「いや、まだ。終業式の日に聞く。」<br>「……直前だと、先約があるかもしれないぞ。女子は集まるのが好きだから。」<br>「何も、一日中おさえようって訳じゃねえから。ほんの十分くらいでいい。」<br>「……そうか。」<br><br>早くに約束して、その日まで緊張しながら過ごすのは無理だ。それに、一日中井上と二人っていうのも、心臓に悪い。<br><br>クリスマスに長年の思いを告白する。<br>そう決めても、結局俺は直前までびびってる。かっこ悪い男だ。<br><br><br><br><br><br><br>プリーズ・シンク・アバウト・イット/ツー
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